沖縄旅行記 初日

すっかり久しぶりの更新。

ブログを更新するのって大変やねぇ。

3月も終わりですが、新婚旅行で沖縄に行ってきたので、

旅先で書いた日記をここに残しておきたいと思います。

それではどうぞ。

 

・3/6(日)

午前6時15分起床。

6時半過ぎに家を出る。

最寄りの駅から京都駅へ移動した後、八条口のバス停から7時20分発の伊丹空港行き

のバスに乗車する。

8時10分に伊丹空港に到着。

小1時間ほど空港内を散策した後、ANAの9時10分発の飛行機に搭乗。

2時間ほどで沖縄に到着。

道中、低気圧で飛行機が何度か揺れる。

妻が「怖いわ」と言っていたのが面白かった。

空港を出ると、タクシーを拾って宿泊先のホテル「ロワジールホテル那覇」へ。

12時ごろ到着し、14時のチェックインまで時間があるため、一旦荷物を預け、徒歩

国際通りへ。

牧志公設市場を目指し、散歩する。

港が近いせいか、どこか埃っぽく少し寂れたような感じを覚えた。

歩き続けると、段々と賑やかになってきて、飲食店や土産物屋が増えてくる。

旭橋駅に着くと、案内地図を確認し、市場へ向かう。

途中にビンテージのアロハシャツを取り扱っている店があったので入る。

幾つか気に入った柄があったが、サイズが合わなかったため、見送り。

その後、若者向けのショップが立ち並ぶ路地を抜け、商店街のような通りに出る。

市場の方向が分からずに少し迷っていると、盲目なのか、杖をついて嬉しいんだか悲し

いんだかよく分からない顔をしたオジイが歩いてきたので、道を譲る。

商店街は路地によって雰囲気が異なるらしく、明らかにその道の人と思われる怖いアン

ちゃんが通りに置かれたソファに腰掛けて俯いている様子などを見た。

こういう沖縄もあるのか、そう思った。

その後、何本かの路地を抜け、商店街を進んでいると、明るい商店街に合流したため、

そのまま進む。

牧志公設市場の入口が見えた。

第一牧志公設市場 公式サイト

スチールのドアを開け中に入ると、最初に目に飛び込んできたのは、ターコイズブルー

イラブチャー、巨大な伊勢エビ夜光貝だった。

「おいしいよ、2階で料理して食べられるよ」

お姉さんが話しかけてきた。

妻とすごく大きいね、一体どんな味がするんだろうと話しながらじっと水槽を見た。

それから1階の市場をぐるっと回ることにした。

鮮魚売り場から少し歩くと漬物屋があったので、店先を冷やかしていると、オジイが

「島らっきょ食うか。」

と、聞いてきたので頂いてみる。

ネギほど青臭くなく、本土のラッキョウほど臭くない。

おいしい。

オジイが買わせようとしてくるので、鰹節と醤油で味付けした島らっきょを

食べ切れる分だけ購入。

500円でいいよと言われたけど、ビニール袋に一掴み入れてあるだけだったので、

これはボラれたなと感じた。

ビニール袋を片手に次の店へ。

精肉店には豚や牛の様々な部位が売られていて、豚の顔まであったのは面白かった。

1階を一周してみたが、海鮮と肉を取り扱う店が大半を占めており、

売っている物はどれもあまり変わらなかった。

トラウマになったのは、夜光貝の巨大な排水口が水槽からニュッと突き出ていたのを

目撃してしまったことで、象牙色の身からはヌメッと感触が伝わってきそうで、

一瞬頭がクラッとした。

その後、昼食を摂るために2階の食堂へ。

フロアを一周した後、「きらく」という定食屋に入る。

tabelog.com

沢山のメニューの中からあれこれと注文する。

オリオンビールで喉を潤していると、さっそく海ぶどうが出てきた。

ポン酢をつけて口に放り込むと、プチプチした触感と海水の味が口の中に広がった。

これはなかなかの珍味だ。

そして、中身汁とグルクンのから揚げ、青パパイヤのチャンプルー、ミミガーが順番にやってきた。

中身汁はあっさりとした醤油ベースのだし汁に、豚ホルモンとカマボコ、

干しシイタケ、蒟蒻が入っており、とても具だくさんでおいしかった。

グルクンは味のしっかりした魚で、頭から尻尾まで丸ごと食べられた。

青パパイヤのチャンプルーは独特の触感が面白く、さっぱりしていて食べやすかった。

ミミガーは辣油と醤油、酢で和えられていて、ビールによく合った。

どれもこれも美味しく、元気が出る食べ物だった。

暑さと湿度に負けないために、スタミナの付く食べ物が好まれるのかもしれないな、

と思った。

食事を終え、良い気分になったところで国際通りをぶらつく。

妻が奥原ガラス製造所のガラスが見たいと言ったため、

伝統産業館が入っているビルへ向かう。

www.mingei-okumura.com


店内を散策し、なかなか良いと感じたものが幾つかあったが、結局何も買わずに外へ。

その後、ゆいレールに乗って首里城へ。

首里城公園 ‐ 琉球王国の栄華を物語る 世界遺産 首里城

国際通りを歩いている最中も、ポツポツと雨が降っていたが、

首里駅に着いた頃から本降りに。

たまらず、途中にあったJAコープで傘とジュース、

そして妻が油味噌を欲しがったため購入。

相合傘で再び歩く。

路地から首里城公園に入り、坂道を昇って首里城へ進むものの、

雨は段々とひどくなり、すっかりずぶ濡れに。

外国人観光客に混じって入場口に辿り着くも、入る気を失ってしまい、

結局入場せずに帰路へ。

途中で首里城の土産物屋に寄り、妻が自分用の傘を購入。

その後、公園の出口まで歩くと、珍しい色合いの鳥がいたため撮影

バリケンという鳥らしい)。

首里城公園の謎の鳥・バリケン(大繁殖中) | ありをりある.com

水かきが発達しており、アヒルに似ていてかわいかった。

公園の出口付近には那覇県立藝術大学と素敵な個人住宅があった。

こんな暮らしが出来たらいいね、妻と喋りながら首里駅へ戻る。

再度ゆいレールに乗ると、妻が天気予報を調べ始めた。

どうやら明日と明後日は晴れるが、残りは雨らしい。

新婚旅行だというのに、何てことだ。

晴れることを祈りたい。

そうこうしている内に旭橋駅に到着したため、歩いてホテルへ。

16時半頃に到着し、フロントでチェックインの手続きを行っている途中、さんぴん茶とチョコレートが出てきた。

さすが高級ホテルは違いまんな。

チョコレートが薫り高くておいしかった。

その後、明らかにホテルマンに向いていなさそうな、

おじさんに連れられて962号室へ。

クロウニンと覚えよう、妻がそう言った。

広く高級感のあるツインベッドの部屋でコーヒーを飲んだり、タバコを吸ったりして、

しばしくつろいでいると、沖縄に来る前に連絡を取っておいた大学時代の友人が

ホテルの入口へハリアーで迎えに来た。

少し太って成金になった以外は、大きく変わっておらず、なんだかほっとする。

「久しぶり、晩飯は魚か肉のどっちがいい?」

「じゃあ肉で。」

「よし、沖縄のアメリカ文化を堪能してステーキを食おう。」

「それええやん。」

早速友人の車でドライブに出かける、渋滞で少し時間がかかるも、

那覇市を通り抜けて沖縄市へ。

米軍基地や歓楽街と沖縄の文化について、友人が金の話と下ネタを交えつつ、

詳しく説明してくれる。

とにかく会話を途切れさせないのは、彼が営業マンだからだろう。

沖縄の夜の街と、会話を楽しみながらも、お腹の空いてきたところで、

メキシコレストランの「リマレストラン」へ。

tabelog.com

3人とも200gのサーロインステーキセットをミディアムレアで注文。

トマト、コーン、溶き卵の入ったコンソメスープ、グリーンサラダを食べ終えると、

熱々の鉄板に乗ったステーキとライスがやってきた。

付け合せは人参のグラッセブロッコリー、フライドポテトだ。

醤油ベースのステーキソースにおろしニンニクをたっぷり入れて、

ステーキにかけまわす。

肉の焼ける匂いと、ニンニク入りステーキソースの匂いが混じりあって、

もうたまらない。

フォークとナイフで一口大に切り分けて、早速口に運ぶ。

噛みしめると肉汁が溢れ、しっかりした肉の旨みが口中に広がる。

ここ最近で食べた肉料理の中で最も美味いと思った。

会話をしながらも夢中で食べている内に、ステーキはどんどん無くなっていく。

とうとう最後の一切れを残すばかりとなった時に友人がふいに尋ねてくる。

「そういや、A1ソースって知ってるか?」 

 「何それ?」

「ステーキにかけるソースなんだけど、ちょっとピリ辛で酸っぱい感じのソース

 なんだよ。人によって好き嫌いは分かれるかな。」

「いいじゃん、試してみようかな。」

「よし、じゃあその肉残しとけ。」

そう言って、友人はA1ソースを持ってくるよう、店員のお姉さんに頼んだ。

お姉さんは店の奥からソースの瓶を持ってきて、神谷に手渡した。

「ほら、試してみろよ。」

「それじゃいただきます。」

僕は瓶の蓋を開け、茶褐色の粘度のあるソースを肉にかける。

「私も試してみる。」

妻がそう言ったので、瓶を渡すと、僕は自分のステーキに向かい直り、

最後の一片を口に運んだ。

ブラウンソースやケチャップを思わせる味わいの後に、

モルトビネガーの酸味と香りが鼻腔を通り抜ける。

濃厚なソースの味と、赤身と脂身の旨みが交わって、また違った美味さに変わった。

「これ美味いね、気に入ったよ。」

「ホントだおいしい。」

どうやら妻も気に入ったようだ。

僕は最後の肉を味わって食べると、ライスを流し込んで完食した。

「ごちそうさまでした。本当に美味かったよ。」

「なら良かったわ。」

そして、僕はホットのアメリカンコーヒーを飲みながら、

ゆっくりと食後の会話を楽しんだ。

「よし、そろそろ行くか。」

友人がそう言って席を立つ。

僕と妻もそれに従って席を立つと、レジへ向かった。

僕が財布からお札を取り出そうとしたところで、友人が引き止める。

「沖縄に来てもらったし、今日は俺が奢るよ。」

「いや、それは悪いよ。自分たちの分はちゃんと出すから。」

「いいって、いいって。」

そう言って友人は3人分の勘定を払った。

せっかくだから、僕は甘えることにした。

「ありがとう、ごちそうさまでした。」

その後、表で友人とタバコを吸った後、他愛もない会話をして、車に乗り込んだ。

それからは北谷の米軍基地やショッピング街を回ったり、

A&Wのドライブインでルートビアやオレンジジュースを飲んだり、

こどもの国や大人の国を回っている内に、21時過ぎになった。

那覇に近づくにつれ、楽しい時間が終わりに近づくのを感じる。

そして、22時前にはホテルに到着した。

「今度また来るときは連絡してよ。」

友人はそう言った。

大学生の時、僕達は確かに同じ時間を過ごした友人だった。

あれから7、8年も経って、僕は僕で色々あったし、

彼も色々なことを経験したはずだ。

でも、今こうして再び出会って、昔と同じように隔たりなく喋れている僕達がいる。

きっと、友情にとって距離や時間の隔たりは関係の無いものなのだと思う。

「本当に楽しかったよ、ありがとう、元気でな。」

僕はそう言って友人の肩を叩く。

友人は一瞬だけ学生の時に戻ったような表情で微笑んだ。

そして、また30歳の社会人の顔に戻ると、

「またな。」

と言って、車で走り去っていった。

次に会うのは一体いつになるだろう。

その時も、今日の様に話すことが出来るだろうか。

また、沖縄に来たいな。

僕はそう思った。

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ロックンロールアドバイザー

新年明けましておめでとうございます。

今年は仕事にブログにセックスにと、充実した1年にしたいと思います。

早速ですが、昨日妻がどうしようもない本を買ってきたので、紹介したいと思います。

 この本、初めて読んだんですけど、ちょっと前に話題になってたみたいですね。

感想は以下の通り。

「ああ、いるいるこんな奴」

「これ、俺の事じゃん・・・」

「何だか辛くなってきた」

以上。

 

自他共に認めるサブカル糞野郎の僕も楽しく拝読させて頂きました。

サブカル界隈で起こる日常と、めんどくさい人たちを鋭く描いた佳作だと思います。

収録作品で特に気に入ったのは、

「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」ですね。

タイトルが秀逸。

童顔で〇〇歳の彼女にバンプの魅力とフジ君の詩について、延々とウンチクを垂れる無職のケンちゃんが妙にリアル。

鼻がデカすぎるところもいいね。

この話にはサブカル男の面倒臭さが詰まってると思うよ。

読了後、フジ君とケンちゃんの詩にヤラれて、思わず僕も詩を書いてみたんだ。

お前らの心を優しい世界に誘うからよ、声に出して読んでみてくれよな。

 

ロックンロールアドバイザー

 

帰り道の電車の中

窓ガラスに映るお前

シケたツラだぜ モテない顔だぜ

 

いつからそうなった 

どうしちまった

お前はもっと輝けるはずだぜ

 

俺からのロックンロールアドバイス

会社なんか辞めろ

ロックンロールアドバイス

残業なんかクソだ

ロックンロールアドバイス

上司を殴れ

 

日曜日の昼下がり

寝転んでTV見るお前

まるでトドだぜ ダサいデブだぜ

 

いつからそうなった 

どうしちまった

お前はもっとスマートなはずだぜ

 

俺からのロックンロールアドバイス

革ジャンを着ろ

ロックンロールアドバイス

ギターを弾け

ロックンロールアドバイス

女を落とせ

 

俺達もういい年だからさなんて

大人ぶるお前

現実的なようで諦めているだけだぜ

 

いつからそうなった 

どうしちまった

お前にはデカい夢があるはずだぜ

 

俺からのロックンロールアドバイス

ミュージシャンになれ

ロックンロールアドバイス

カフェを開け

ロックンロールアドバイス

人生を賭けろ

 

俺はロックンロールアドバイザー

夢を忘れるお前に

ロックンロールアドバイス

語りかけるぜ

ロックンロールアドバイス

自分を信じろ

ロックンロールアドバイス

お前ならやれる

ロックンロールアドバイス

いつの日かきっと

ロックンロールアドバイス

夢は叶うぜ

 

誰か曲つけてください。

あと、サブカル野郎は死ね。


BUMP OF CHICKEN「天体観測」スペシャルMV

 

家族の風景

僕は妻の他に3人の家族がいる。

 

彼らは僕たちの日常に潤いと安らぎ、そしてちょっとした笑いを与えてくれる。

今日はそんな素敵な僕達の家族を紹介していきたいと思う。

 

・みどりくん
妻が同居してすぐの頃に買ってきた観葉植物。
長い間正式な品種が判明せず、名前が無かったため、僕が命名。
名前の理由は、「なんか緑色だから」。
僕のネーミングセンスに妻が驚愕した。
水を遣る際に、「みどりさん、マジかっこいい体してますよね。新芽、出してもらっていいすか?」と、部活の後輩風に声掛けしていたら、1年間で加速的な成長を見せ、優に3倍を超える大きさになった。
我が家の窓際を占領するイカしたグリーンボーイ。

 

ゆとりちゃん
京都の清水五条の陶器祭りに行った際、なぜか買ってしまったジャンボこけし
購入した理由は「なんか呼ばれた気がしたから」。
待ち合わせ場所に、こけしを持って現れた僕に妻が驚愕した。
現在は寝室の箪笥の上に常駐し、僕達の夜の営みを監視し続けている。
顔に縦に走る傷を持つことから、前のある「オンナ」であることが窺える。
名前の由来は、本体の裏側に「平成元年製造」と書かれていたことから。
時々抱きしめて口づけをしてあげると、ほんのり彼女の頬が赤くなる気がするんだ。
僕は早く病院に行った方が良いのかもしれない。

 

・かぴのすけ
妻が大学時代から連れ添ってきたカピバラさんのぬいぐるみ。
僕のライバル。
夜毎に妻の寝具に忍びこむと、そこには必ず奴がいる。
負けじと妻に情熱的なペッティングを施す僕を、どこか憐憫の目で見つめてくる。
過熱するペッティング、高まる妻、始まる行為、だけど奴は目をそらさない。
興奮した妻は叫ぶ。
「かぴのすけ!私をメチャクチャにして!!!」
僕は自覚する。
所詮、自分は肉人形に過ぎないということを・・・

 

家族っていいよね。

 


ハナレグミ 家族の風景

せいしって何だっけ?

「せいし」と聞いてみんなは何を思い浮かべるかな?

「静止」、「生死」、「精子」、いろんな「せいし」があるよね。


平成27年11月13日大安。

僕は京都市内にある某神社の新郎控室に居た。


両親や姉夫婦と待機していると、巫女さんと言うにはあまりにもお年を召された女性が僕に近づいて来た。

「失礼します。式の流れを説明させて頂いてよろしいでしょうか。」

「どうぞ。」

僕がそう答えると、巫女さんは神前式の流れを順番に説明し始めた。

参進の儀、修祓の儀、 祝詞奏上の儀 、三々九度の盃・・・

堅苦しいワードが並び続け、正直眠くなってきたところ、巫女さんがおもむろに折りたたまれた和紙を僕に差し出すとこう言った。

「こちらはせいしになります。」

「せ、精子ですか?」

「ええ、誓詞です。」

精子なんだ・・・

僕は日本の伝統文化に改めて触れ、思わず背筋が伸びる思いがした。

「誓詞奏上と申しまして、神様の前で誓いの言葉を述べて頂きます。」

ああ、そういう事か・・・

「分かりました。これを読み上げればいいんですね。」

「はい、読み終えましたら玉串を捧げた後、席にお戻りください。続いて両家のお父様方からも玉串を捧げて頂きます。その後、ご親族一同でお神酒を頂き、神主の挨拶で終了となります。何かご質問はございますか。」

精子だけでは飽き足らず、玉を捧げろだなんて・・・。

僕はこれから行われる儀式に狂気を感じながらも、下半身に不思議な高揚を覚えた。

正直、袴の下はビシャビシャだ。

「いえ。特にありません。」

「それでは、今しばらくお待ちください。」

そう言うと巫女さんは去っていった。

それから誓詞の内容を確認したり、親族と歓談したり、写真を取ったりしている内に、式の時間になり、巫女さんが再度控室に入ってきた。

「それではお時間になりましたので、皆様本殿へお移り下さい。」

さあ、生本番だ。

僕は控室を出ると、白無垢に綿帽子姿のエイリアンみたいな恰好をした美しい妻と一緒に、神社の境内をゆっくりと歩いて本殿へ向かった。


季節は秋。

木々は色付き、空は澄んでいる。

新たな門出には丁度良い日だ。


通路を進み、短い階段を上がって、僕は本殿にインサートした。

中には机と人数分の椅子が用意されており、僕と妻は神前の真向かいの椅子に腰掛けた。

そして、式が始まった。

神主のお祓いと祝詞が終わると、金ピカのジョウロみたいな酒器から、巫女さんがお神酒を注いでくれた。

巫女さんの言った通り、僕は三つの盃を三度に分けて飲み干した。
体の隅々まで清められる気分だ。

そして、とうとう「せいし」の時がやって来た。

僕は妻と並んで神前に立つと、巫女さんから渡された和紙を懐から取り出した。

そして、深く息を吸い込み、丹田に力を込めると、秋空に響き渡るほど強く、神に誓いを立てた。


誓詞


今日を吉日と定め〇〇神社の大前に

〇〇 〇〇〇〇 〇〇

夫婦の契りを結び固むるに依りて

今より後は互いに相和し相睦び

楽しきを分かち苦しきを共にして

長く久しく夫婦の道に背くことなく

家政を治め子孫の繁栄を計るべく

誓い奉ることを茲に謹みて白す


平成二十七年十一月十三日

夫 〇〇 〇〇

妻 〇〇 〇〇


一息に読み終えると、僕は妻の横顔を見る。

その口元は綻んでいて、何だか幸せそうに見えた。


この世の中にはいろんな「せいし」がある。

今後、僕は妻と生死を共にする。

僕の精子が妻を孕ませ、子を成すこともあるだろう。

その子が育ち、一人前になって、今日の僕のように誓詞を読み上げる日がきっと来る。

そして、僕はいつしか老いて、やがて全てが静止する日が来るのだろう。

せいし、せいし、せいし、せいし。

 

今日ほど幸せな日は無い。

僕は、そう思った。

 

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宝くじは買わない

今日は嫁と飲みに行った。

 

僕の近所には美味しい焼き鳥屋さんがあって、刺身で食べられるほど新鮮な鶏肉を、絶妙な火の通し加減で焼いてくれる。

僕はサッポロの中瓶、妻は白ワインを。

お互いのグラスに軽く触れると、僕はコップの中身を飲み干した。

キリリと冷えたビールが喉を潤す。

 

うまい。

 

さっそく頼んだ串が運ばれてきた。

まずは肝をタレで。

甘めのタレ、肝の旨み、プリプリの触感が口を楽しませてくれる。

おいしくて、すぐに食べてしまう。

そして、ビールを一口。

最高だ。

 

口中の余韻に浸りながら、ふっと、隣を眺める。

今日の嫁は着物姿だ。

彼女は1年前から着付けを習っていて、最近自分で着られるようになってきたらしい。

今日はお友達とランチに行ってきたらしい。

楽しそうな妻の顔を見るのは嬉しいことだ。

幸せだな、と思った途端に、今日の自分の不甲斐なさが襲ってきた。

 

今日は将棋の大会でボロボロに負けた。

初めてのチーム戦で気合を入れて行ったにも関わらず、全く自分の実力が出せず、負け越しに終わった。

僕は石田流三間飛車ゴキゲン中飛車、4-3戦法を愛する生粋の振り飛車党だ。

5年前に将棋を初めて、道場では三段。

最近では四段の人にも勝てるようになってきて、正直自分は強くなってきたんじゃないかと思っていた。

でも、全くそんなことは無かった。

道場将棋がいくら強くても、大会で勝てなければ意味が無い。

大会ならではのテクニック、時間配分、焦りやプレッシャーに打ち勝つメンタリティ。

僕はどれも持ち合わせていなかった。

結果、僕は負けた。

自分が情けなかった。

 

みじめな気持を抱えて帰路に着く途中、駅の構内で何やら行列ができていた。

「年末ジャンボ!今年は一等10億円ですよー!!」

売り子のおじさんがなにやら叫んでいる。

僕は普段、宝くじなんて買わない。

こんな気持ちの時は、宝くじなんて当たらない。

でも、こんな時だからこそ買ってみようかなと僕は思った。

頭をからっぽにして10分ほど列に並んでいると、いつの間にか窓口の前まで来ていた。

「はい、どうしましょ?」

おばちゃんが僕に尋ねる。

「じゃあ、ジャンボとミニをバラで10枚づつ。」

「はい、6,000円ね。」

僕は財布から1,000円札を6枚取り出すと、会計のトレイに置いた。

「じゃあこれで。」

「はい、確かに。じゃあこれ10枚づつになります。」

「ありがとう。」

僕は宝くじの包みを受け取り、肩掛けカバンに入れると、列を離れた。

そして、とぼとぼと歩き、電車に乗り、家に帰った。

家に帰り、座椅子にもたれながらコタツに入っていると、嫁が帰ってきた。

「晩御飯どうする?」

「飲みに行こうか。」

そして、今このカウンターに座っている。

 

嫁が僕に聞く。

「ねえ、あなたにとっての一番ってなに?将棋?」

「なんだろう、将棋もそうだけど、あとは書くことかな。」

「でもいつも将棋ばっかりしてるじゃない。」

「そうだよな、小説も書きかけのまま止まってるし。」

「もう、普通の将棋好きのサラリーマンでいいんじゃない?」

なかなか痛いところを突いてくる。

「将棋って強くなって何になるの?プロになるわけじゃないんでしょ?」

「まあ、今からプロになるのは難しいだろうね。」

「休みになると、時間の大半を将棋に使ってるじゃない。だったらもう少し小説に集中したらいいんじゃない?」

「君の言う通りだ。結局、僕は将棋も小説も中途半端にやってるからダメなんだ。将棋を強くなろうと思ったら、集中して勉強しないとダメだし、小説だってきちんと書かないといつまで経っても完成しない。これを機に小説に集中しようかな。」

「それがいいかもね。」

「じゃあ、暫く将棋は止めるよ。」

「別に止めなくてもいいじゃない。息抜き程度なら。あなたは一つの事にのめり込み過ぎるのよ。」

「やっぱりそうなのかな。小説もさ、真剣に書いちゃうから、段々苦しくなってきて、つい将棋に逃げちゃうんだよね。逃避の為に将棋をやってるような奴が強くなれるはずないよな。」

「ねえ、あなたブログとか興味ない?」

「え?」

「知り合いの人が結構ブログとかツイッターとかインスタグラムとかやってるのよ。大学時代の同期の子も、サイトで小説公開してるし。」

「そうなんだ。」

「もっと軽く文章を書いてみたら。自分の生活とか、本とか映画の感想とか、なんならBL小説とかでもいいし。」

「たまげたなあ。」

「何でもいいから書く習慣が身に着けば良いと思うのよね。やってみたら。」

「なるほどね。」

 

そういうわけで、早速ブログをはじめてみました。

宝くじ、当たるといいなあ。

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